
「パーティー」や「ヒュー」など外来語や擬音では、音を伸ばすときに長音記号(音引き)を使います。しかし「コンピューター」と「コンピュータ」ではどちらがいいのか、といったように、長音記号を入れるべきかどうか悩むことも多いでしょう。
事前に用語集で規定されていれば、何にも考えずに従えばいいのですが、用語集が古かったり、そもそも無かったり、また長音記号をつけるかどうかの慣例も、時代とともに変わってきています。
時代とともに変化する長音記号のルール
基本的には、カタカナ表記の際に「つづりの終わりの -er、-or、-ar あるいは -y」に対応して語尾の音に長音を付けることが一般的です。しかし技術系の分野においては、長音符号を省く慣例もあります。
かつてIT関連の取扱説明書では、長音を極力入れないという暗黙のルールが存在していました。ところが、最近のWindows 10では「ブラウザ」が「ブラウザー」に代わっています。長音を省略するが主流だったのは少し前のことで、最近は長音記号をつけることが主流になりつつあり、この先もどう変わるかわかりません。
参考)平成3年 内閣告示第二号
原語(特に英語)のつづりの終わりの -er、-or、-ar などに当たる語は、原則としてア列の長音とし長音符号「ー」を用いて書き表す。ただし、慣用に応じて「ー」を省くことができる。 |
参考)JIS(日本工業規格)の「Z8301」
長音を省略するためのルールが規定されています。基本ルールは次の2点。 ①その言葉が3音以上の場合には,語尾に長音符号を付けない ②その言葉が2音以下の場合には,語尾に長音符号を付ける |
分野によって変わる長音記号の慣例
電気や電子、情報、通信、機械といった分野では、一部の語で語尾の長音記号を省く慣例があります(物理、化学などの分野では省かないのが一般的)。
ただし、電気や電子、情報、通信、機械の分野でも、一般ユーザー向けの文書では長音記号を付けることもあります(例:BDレコーダー)。
長音記号の使い分けの目安
先に示した原則通りに、原語のつづりの終わりが「-er、-or、-arあるいは-y」だからといって「トランジスター、コンピューター」という表記では、語感が間延びしていると感じる人もいるかも知れません。かといって「バー(bar)やキー(key)」が「バ、キ」では不自然です。
上記の例でいうと、技術者が馴染んでいるのは長音記号をつけない「トランジスタ、コンピュータ」です。専門分野の用語の基準となる学術用語集を見ても、長音記号を付けず「トランジスタ、コンピュータ」と表記されています。
電気や電子、情報、通信、機械の分野の技術文書には、3音ルール(3音以上の単語には長音記号をつけない/3音以下の単語には長音記号を付ける)が使われることが多いようです。3音ルールで判断する方法は、出版社などでもよく使われています。
3音ルール
原語(特に英語) | ルール | 例 |
---|---|---|
つづりの終わり が-er、-or、-ar | 3音以上は語尾の「ー」を省略する | モニタ(monitor)、フィルタ(filter) |
2音までは語尾に「ー」を付ける | パワー(power)、シャワー(shower) | |
2音までであっても間に長音を含む場合は語尾の 「ー」を省略する | モータ(motor)、サーバ(server) ※ユーザ、メーカなども同様の扱い方をする場合がある |
|
つづりの終わり が-y | 3音以上は語尾の「ー」を省略する | メモリ(memory)、テクノロジ(technology) |
2音までは語尾に「ー」を付ける | コピー(copy)、ボディー(body) ※原語の表音符号では長音ではない | |
2音までであっても間に長音を含む場合は語尾の 「ー」を省略する | プーリ(pulley) | |
定着した慣用がある場合 | 慣用に従う | ムービー(movie)、エア/エアー(air) 、ホッパ/ホッパー(hopper) |
結論=どちらも正しい
結局のところ「どちらが正しいの?」という質問への回答は「どちらも正しい!」が正直なところです。
長音記号を付けるかどうかよりも、むしろ大切なことは「表記を統一すること」であるといえます。表記が混在することで読み手を混乱させることのないよう、用語集を充実させるなどの対策が重要です。
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